事例紹介 Case study

東京都 日比谷公園 小音楽堂ベンチ

東京都 日比谷公園
小音楽堂ベンチ

設計・製作の事例

日比谷公園小音楽堂は国内初の野外音楽堂です。1905年に完成した初代の堂舎は、八角形の鉄骨銅板屋根バンドステージ式で1923年関東大震災の時、倒壊しました。その後建て替えを経て、現在の堂舎は1982年に建築された3代目の建物です。

小音楽堂の利用は、軽音楽などの音楽演奏のみで、集会等は禁止され、営利目的の利用はできません。定期的な催しとして消防庁(水曜)、 警視庁(金曜)のコンサートが4月~10月の間(7・8月は夏季休演)、昼休みの時間に行われています。

地図

1. 設計の経緯

本改修工事は2014年度に基本設計、2017年度に実施設計が行われ、2018年度に改修工事が行われました。
弊社は基本 設計から観客席ベンチのデザインを行い、実施設計を経て製作しました。

2. 課題

① 経年による劣化

ベンチ座と背の廃プラスチックは脱色が進行し、表面の劣化が目立っていました。脚部のコンクリートは表面の劣化、クラックの発生、部分的な欠損、補強材の腐食がありました。

② 樹木の影響

根の持ち上がりによる根囲みの破損や舗装の亀裂が、観客席のベンチにも大きく影響を与えていました。
また、樹液による汚れの影響もありました。

樹木の影響による不陸

樹木の影響による不陸

根の持ち上がり

根の持ち上がり

脚部の破損

脚部の破損

3. 設計条件

  • ① 改修の範囲

    観客スペースの改修を目的とし、堂舎やステージ、外周のフェンスは現況のまま残す。

  • ② 客席数

    現状の定員(客席1070席 障害者用5席)を維持する。

  • ③ 法令

    座席間隔、通路までの距離、通路幅等の屋外劇場の観客席基準(東京都火災予防条例)を満たす。

  現況 計画
意匠 当時としては先進的なオリジナルデザイン。 緑の景観に溶け込み、 堂舎や外周フェンスとの調和も良い。 現況ベンチのイメージを踏襲する。
機能 座面が水平で背もたれが低く、リクライニング性に乏しい。脚は部材寸法が大きくなるため、座席間隔を広く必要とする。 人間工学のデータに基づき、座面に角度を設け、背もたれも高くし体の支持性を確保し、リクライニング性を高める。金属脚にすることで、寸法をスリム化し必要座席数を確保するとともに、軽量化により施工性を高める。
材質
  • 座・背
    廃プラスチック、製作寸法精度が悪く成形管理が難しい材料である。

  • コンクリート、部材寸法が大きく、重塁が重い。
  • 座・背
    人工木材 現在公共空間で多く使用実績があり、寸法精度もよく、吸水率が低いため樹液等の汚れが染込みにくい。

  • アルミ鋳物 形状の自由度が高く、軽量で耐久性に優れる。リサイクル性もある。
その他 劣化はしているが使用に耐えてきた素材の耐久性は評価できる。 現在、使用可能で耐久性、製作精度、費用等を満足し、現況のベンチと同等の性能を有する素材として人工木材を選定した。
人工木材は20cm幅の幅広の木材を特注で製作した。
図面

4. 製作工程

①設計図面作成 ⇒ ②モックアップ作成 ⇒ ③製作図面作成 ⇒ ④試作品製作 ⇒ ⑤本製作 ⇒ ⑥組み立て ⇒ ⑦現場搬入

②モックアップ作成

図面をもとに発泡材で座板、脚のモックアップを作成し全体の納まりや細部の面取り等を検証しました。

④試作品製作

実際の座り心地や強度等を検証して、微調整したうえで全数の製作を開始しました。

計画配置図

ベンチは客席の割り付けからタイプの長さの製品を作りました。

計画配置図

(A)左からの視点

(B)ステージからの視点

(C)観客席からの視点

ベンチの座と背は20cm幅の人工木材を特注で製作した。

ベンチ側面

ベンチ側面

ベンチ(アルミ鋳物)脚の上部イチョウの葉の形状

ベンチ(アルミ鋳物)脚の上部イチョウの葉の形状

ベンチ(アルミ鋳物)脚の下部

ベンチ(アルミ鋳物)脚の下部

セメント基礎ブロック

セメント基礎ブロック

観客席ベンチの図面

設計・製作の事例

Data

東京都 日比谷公園
小音楽堂ベンチ

  • 施主:東京都東部公園緑地事務所
  • 設計:株式会社あい造園設計事務所
  • 元請:加勢造園株式会社
  • 製作:株式会社アンス
  • 完成:令和2年3月
  • 住所:東京都千代田区日比谷公園1
  • 最寄り駅:東京メトロ日比谷線「日比谷駅」(A10・A14)出口すぐ

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