事例紹介 Case study

タコの遊具 改修・更新事例

改修(長寿命化)の事例

長く親しまれたシンボル性を有する遊具の更新事例

昭和40年ごろから全国各地でつくられたタコの遊具は、50年以上経過した今、老朽化し、更新の時期がきていますが、地域の人々からタコの存続を望む声も多くあ がっています。アンスでは、その声を受けて、先代のタコの魅力を残しつつ、遊具の安全規準に適合した安全なタコとして新しく生まれ変わ らせる製作を行っています。アンスが近年に行ったタコの遊具の更新事例をご紹介します。

1.東京都 辰巳の森緑道公園 スーパータコの遊具

辰巳の森緑道公園は、昭和50年に開園された海上公園です。東京都は、平成29(2017)年、「賑わいと⾃然あふれる海辺を⽬指して―海上公園ビジョン―」を策定し、⾠⺒の森緑道公園もこの「海上公園ビジョン」を具体化すべく、施設の再整備を⾏うことになりました。

スーパータコの遊具は、その再整備の一環で新設した日本最大級のタコの遊具です。海上公園であることから、「芝広場を東京湾の海に⾒⽴て、そこにいる巨⼤タコ」をイメージし、地域の人々に親しんでもらえるシンボル性と、広い芝広場を強く印象付ける情景を創出することをコンセプトに製作しました。

公園の場所

公園の地図

配置図

■スーパータコ遊具の特徴

1.スケール感の強調 本体15.4m×14.6m×5.4mH。周囲の⾜を含めると最⼤25mになります。
2.シンボリックな遊具配置 東京メトロ有楽町線⾠⼰駅の地上出⼝をでるとその正⾯に本遊具が⾒えます。
アプローチ園路のビスタ景観を意識し、強調するシンボリックな配置となっています。
3.遊びの動線の工夫 タコの本体を中⼼に円環状の回遊動線を計画し、タコ本体を中⼼にタコ⾜ウォール・タコ⾜滑り台・泡ステップを周囲に配し、⼤⼩の円環構造が重なりあい多様な遊びの動線を構成しています。周囲には見守りベンチも配しています。
4.安全規準に適合 本遊具は、「JPFA 遊具の安全に関する規準」に基づいて設計しています。

タコ足すべり台

見守りベンチ

完成写真

正面

背面

クライム

くぐりすべり台

正面すべり台からの景色

右足のすべり台

ホールドクライム

クライムと正面すべり台

2.タコの遊具について

(1)タコの遊具の由来

タコの遊具は(以下、タコと称する)、セメント系遊具の代表格ともいえる遊具です。鉄筋造形にラス網を張りモルタルを重ね塗りし、表面を人造石等で仕上げたものとなります。昭和40 年代から日本全国に数多く設置され、愛嬌のある不思議なかたちから市民に親しまれ、公園のシンボルとして「タコ公園」として呼ばれている事例が多くあります。すべる、のぼる、くぐるなど、子どもが様々な遊びを展開できる造りが魅力です。

(2)タコの遊具の特徴

1.遊びの価値

  • 自由に遊ぶ → 創造性、積極性、主体性を育む
    すべり面、登はん面等が、併設されている場合が多く、子どもたちに遊び方を強制していないので、子どもたちの工夫次 第でさまざまな遊びが可能です。
  • 集団遊びを展開する → 社会性を学ぶ
    数多くの子どもたちが集まって遊びを展開することができます。
  • 遊び体験の共有 → (家族の)絆を深める
    寿命が長いので世代(時間)を超えて遊び体験を共有できます。

2.長寿命である

  • 他の素材に比べ、長寿命(使用見込み期間が約40年)であり、ストック効果が期待できます。

3.造形性が高い

  • 美しい造形に触れることで子どもたちの情緒性、感受性を高めます。
  • 市民に長く親しまれた遊具は、地域のシンボル的存在になり、遊具の形状がそのまま公園名になるような事例が多くあります。また、国交省の公園施設長寿命化計画策定指針でも計画の優先順位が高いとされています。

4.安全性

  • 階段、手すり壁等で利用動線が明確なので衝突、転倒の可能性が低い設計になっています。
  • 直接落下する箇所(階段等の登行部の落下防止柵のない踊り場の下など)がありません。

(3)市民に親しまれるタコの遊具

1971年に誕生してから多くの市民に「タコ公園」として親しまれてきた調布市のタコは、調布駅前広場整備等に伴い、撤去されました。公園の最終日にはタコのお別れ会が開かれ、2000人ほどの市民の方が訪れました。撤去決定後から市民からタコ復活の要望が多くあったため、遊具規準に基づき、既存のタコから進化した新しいタコが作られました。

お別れ会の様子

お別れ会の様子

公園の長寿命化計画策定指針について

国土交通省都市局によって平成24年に作成された「公園施設長寿命化計画策定指針」の改訂版が、平成30年に作成されました。この指針は、公園施設の計画的な維持管理の方針を明確化・共有するとともに、施設ごとに管理方針・長寿命化対策の予定時期・内容などを、最も低廉なコストで実施できるよう整理されたものです。

公園施設の長寿命化計画策定の手順

1.長寿命化計画の対象とする都市公園等の設定 > 2.予備調査 > 3.健全度調査・判定 > 4.長寿命化計画の策定

遊具における維持管理の視点

維持管理の手法には、予防保全型管理と事後保全型管理があり、遊具は事故防止を最優先するため、前者の手法を用いて定期修繕・補修の実施が前提とされています。
予防保全型管理では健全度調査・判定の結果に基づき公園の顔やシンボル等としての公園施設の美的価値等を踏まえ総合的に判断することが求められます。この判断に基づき、該当する遊具を更新(施設の交換や新設)・補修(大幅な修理や交換)・維持保全のいずれかで対応するかを決めます。

長寿命化に貢献するセメント系遊具

  • セメント系遊具は、使用見込み期間が約40年以上の施設であり、補修することでより長期間使用することができます。(表A)
  • セメント系遊具はその特徴から、健全度調査・判定の結果に基づく判断の際に考慮すべき事項として例示されている、 「公園施設の愛着など、地域ニーズへの配慮」や「パブリックコメント等の市民の意志」、「公園の顔やシンボル等としての美的価値」等に該当する事項を内包する遊具です。

(表A)劣化モデル式による使用見込み期間

  • ※公園施設長寿命化計画策定指針(案)【改定版】平成30年10月国土交通省を参照

3.新旧タコの遊具の比較

(1)既存タコの遊具の問題点

既存のタコは、安全規準に適合していない箇所があり、遊びの要素を減らすことなくその箇所を改善して新しいタコを作りました。

既存のタコ

新しいタコ

(2)改良ポイント

(A-1)階段の設置

  • 従来のタコには階段の無いものがある
  • 大人が子供を救助しやすい
    (大人が子供を救助できる構造としなければならない(遊具規準)
  • 階段の形状:遊具規準適合

(A-2)安全領域の確保

(A-3)不用意な動線交差がない

(A-4)すべり面すべり方向の動線エリアが重ならない

(B-5)壁の天端形状と高さ

  • 天端形状が、「かまぼこ型」で立ちにくく、歩きにくい
  • 落下防止壁
    踊り場や通路からH700mm以上
  • 側壁
    H100mm~150mm以上

(B-6)頭部、胴体の首・指の挟みこみが発生する形状なし

  • 絡まり・引っかかったりすることが起きるような形状なし
  • ボルトナット類なし ・鋭利な先端・角・縁なし
    (※タコの遊具の全体的な特徴)

(C-7)着地面から減速部の終端上端部までの高さ
幼児用、児童用、両方の規準内で一番低い150mmとしている
(どちらも使えて低い方が安全)滑降部/斜面角度/平均35°以下すべり面の出発部は水平である

(C-8)安全に乗り移ることを補助するため、クライムのおどり場は、手がかりを設ける

(C-9)ホールドクライムは、手足が挟まる恐れのある形ではない

(C-10)基礎土被り100mm以上
以前は、布基礎であった基礎形状をベタ基礎に変更。これにより、不同沈下等による捻じれを抑え、表面のひび割れ抑止とした。また、土中からの湿気が上り難いため、内部造形鉄筋の劣化の進行を抑え、耐久性の向上に寄与している

4.事例紹介

(1)東京都調布市 (仮称)鉄道敷地公園

住所 東京都調布市小島町2-26-5
寸法 W11,850×D3,800×H4,500
完成 2020年3月

(2)東京都八王子市 明神公園

住所 東京都八王子市明神町4-24
寸法 W10,900×D5,800×H4,500
完成 2020年3月

(3)北海道北広島市 やまぶき公園

住所 北海道北広島市広葉町2-53
寸法 W10,900×D5,800×H4,500
完成 2021年11月

(4)北海道むかわ町 福住たこ公園

住所 北海道勇払郡むかわ町福住2丁目
寸法 W7,650×D5,080×H3,500
完成 2021年11月

(5)兵庫県伊丹市 尼ケ池公園

住所 兵庫県伊丹市瑞穂町3-45
寸法 W10,900×D5,800×H4,500
完成 2022年3月

(6)静岡県沼津市 駿河台公園

住所 静岡県沼津市駿河台15
寸法 W10,900×D5,800×H4,500
完成 2022年3月

(7)静岡県沼津市 市道公園

住所 静岡県沼津市市道町17-21
寸法 W10,900×D5,800×H4,500
完成 2023年3月

事例(1)東京都調布市(仮称)鉄道敷地公園

  • 住所:東京都調布市小島町2-26-5
  • 寸法:W11,850×D3,800×H4,500
  • 完成:2020年3月

Before

After

ホールドクライム

落下防止壁は高さがあり安全です

すべる子ども

吸盤クライム

事例(2)東京都八王子市 明神公園

  • 住所:東京都八王子市明神町4-24
  • 寸法:W10,900×D5,800×H4,500
  • 完成:2020年3月

Before

After

背面から見たタコ

ホールドクライム

すべる子ども

右側からみたタコ

事例(3)北海道北広島市 やまぶき公園

  • 住所:北海道北広島市広葉町 2-53
  • 寸法:W10,900×D5,800×H4,500
  • 完成:2021年11月

Before

After

背面から見たタコ

すべる子ども

ホールドクライム

正面すべり台で遊ぶ子ども達

右側のすべり台で遊ぶ子ども達

事例(4)北海道むかわ町 福住たこ公園

  • 住所:北海道勇払郡むかわ町福住2丁目
  • 寸法:W7,650×D5,080×H3,500
  • 完成:2021年11月

Before

After

施主の要望により小さいサイズになりました

右側から見たタコ

左側の階段とトンネル

左側のすべり台で遊ぶ子ども達

タコのある公園の風景

事例(5)兵庫県伊丹市 尼ケ池公園

  • 住所:兵庫県伊丹市瑞穂町 3-45
  • 寸法:W10,900×D5,800×H4,500
  • 完成:2022年3月

Before

After

右側から見たタコ

左側から見たタコ

背面から見たタコ

事例(6)静岡県沼津市 駿河台公園

  • 住所:静岡県沼津市駿河台 15
  • 寸法:W10,900×D5,800×H4,500
  • 完成:2022年3月

Before

After

すべり台で遊ぶ子ども達

左背面から見たタコ

すべる子ども

タコのある公園の風景

事例(7)静岡県沼津市 市道公園

  • 住所:静岡県沼津市市道町 17-21
  • 寸法:W10,900×D5,800×H4,500
  • 完成:2023年3月

Before

After

正面すべり台で遊ぶ子ども達

左背面から見たタコ

左側から見たタコ

桜とタコのある公園の風景

改修(長寿命化)の事例

Data

タコの遊具 改修・更新事例

(1)東京都調布市(仮称)鉄道敷地公園

  • 住所:東京都調布市小島町2-26-5
  • 寸法:W11,850×D3,800×H4,500
  • 完成:2020年3月

(2)東京都八王子市 明神公園

  • 住所:東京都八王子市明神町4-24
  • 寸法:W10,900×D5,800×H4,500
  • 完成:2020年3月

(3)北海道北広島市 やまぶき公園

  • 住所:北海道北広島市広葉町 2-53
  • 寸法:W10,900×D5,800×H4,500
  • 完成:2021年11月

(4)北海道むかわ町 福住たこ公園

  • 住所:北海道勇払郡むかわ町福住2丁目
  • 寸法:W7,650×D5,080×H3,500
  • 完成:2021年11月

事例(5)兵庫県伊丹市 尼ケ池公園

  • 住所:兵庫県伊丹市瑞穂町 3-45
  • 寸法:W10,900×D5,800×H4,500
  • 完成:2022年3月

(6)静岡県沼津市 駿河台公園

  • 住所:静岡県沼津市駿河台 15
  • 寸法:W10,900×D5,800×H4,500
  • 完成:2022年3月

事例(7)静岡県沼津市 市道公園

  • 住所:静岡県沼津市市道町 17-21
  • 寸法:W10,900×D5,800×H4,500
  • 完成:2023年3月

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